粒子法シミュレーションの研究
粒子法は独自に開発した連続体力学のための新しいシミュレーション手法です。これまでの有限要素法や有限体積法とは異なり、格子を必要としないため、複雑な現象を扱いやすいという特徴があります。東京大学発ベンチャーであるプロメテック・ソフトウェア株式会社によって粒子法の商用ソフトウェアが作られています。
・MPS法(Moving Particle Simulation Method)
・圧力陽解法の研究
・粘性陰解法の研究
・高精度スキームの研究
・数値安定性の研究
・混相流の計算モデルの研究
・相変化の計算モデルの研究
・流体-剛体, 流体-構造連成計算アルゴリズムの研究
・境界条件の研究
・空間解像度のコントロールに関する研究
・スーパーコンピュータによる大規模並列計算アルゴリズムの研究
人の役に立つシミュレーションへの試み
物理ベースコンピュータグラフィックスシミュレーション技術は既にものづくりに欠かせない重要な技術に成長しています。研究室では、シミュレーション技術の適用範囲をさらに広げていきたいと考えています。
・津波の3次元陸上遡上の大規模シミュレーション
・津波における浮遊物の挙動のシミュレーション
・津波による建屋への浸水のシミュレーション
・肺の呼吸による運動のシミュレーション
・乳房の重力による変形のシミュレーション
・嚥下のシミュレーション
・三半規管内の流れのシミュレーション
コンピュータシミュレーション技術とコンピュータグラフィックス技術を組み合わせると、物理ベースCGと呼ばれる新たな領域が生まれます。映像制作、ゲーム制作、災害対策、医療など、様々な展開が期待されています。
・粒子シミュレーション結果に基づいたコンピュータグラフィックス(流体、固体、剛体、膜)
・シミュレーションの高速化による映像制作
・GPU (Graphics Processing Unit) を用いた粒子シミュレーションの高速化
・実地形による災害シミュレーションと可視化
シミュレーションの実際問題への応用
共同研究などで実際問題への応用を研究しています。具体的なニーズから計算手法に関する研究テーマが生まれますので、基礎と応用のバランスはとても重要です。
・肺がんの放射線治療の高度化のための肺の運動のシミュレーション:肺の呼吸による運動をシミュレーションできれば、肺がんの放射線治療の精度を高めることができます。東京大学医学部附属病院と共同研究しています。
・嚥下のシミュレーション:高齢者の誤嚥(飲み込みの失敗)は重要な問題です。シミュレーションの観点から嚥下のメカニズムの解明や、誤嚥を防ぐ方法の支援を行いたいと考えています。病院と食品会社との共同研究として実施しています。
・粒子法の大規模高速シミュレーション:これから開発されるであろうポストペタスケールのスーパーコンピュータにおいて、効率的な大規模高速計算を実現するために、粒子法による大規模高速計算アルゴリズムの研究をしています。有限要素法の研究者らと共同研究しています。
・複合材料のシミュレーション:炭素繊維強化プラスチックは軽くて強度があり、次世代の材料として有望です。そのシミュレーション技術を民間会社と共同で研究しています。
・樹脂の製造プロセスのシミュレーション:樹脂の製造プロセスでは複雑なマルチフィジックスシミュレーションが必要です。その研究を民間会社と共同で実施しています。
2014.5.15