1. 大学における研究の役割
大学では独自の発想で研究テーマを決めて、主体的に研究に取り組んでいます。もちろん、研究の社会的意義、産業からのニーズ、専攻の方向性も考慮することは必要ですが、あくまでもこれまでの研究の経緯を踏まえて次の展開を図ることが基本です。もちろんこれは、主体的な発想にもとづいた研究が社会の健全な発展に貢献するということについて、広く社会に認めていただくことが前提です。さらに工学の分野では、優秀な若者といっしょに最先端の研究を行うことで、国際競争に勝ち抜いていくための技術者や、研究を引き継いでいく研究者を育てていくことができると考えています。
2. 研究室の特徴
研究室では流体や固体の運動に関するコンピュータシミュレーションを研究しています。特に、粒子法という独自のシミュレーション技術を、世界の先頭に立って発展させています。MPS(Moving Particle Semi-implicit)法と名づけられた粒子法は本研究室で考案された方法で、今では世界で広く研究されています。ベンチャー会社の商用ソフトウェアなどを通じて産業応用も盛んに行われています。コンピュータシミュレーションはこれからも大きく発展していく分野ですし、産業における利用もますます増えていくと予想されています。
3. 卒論への期待
これまでの勉強とは違って、卒論は研究です。勉強が充電としたら研究は放電です。大学生活の最後を卒論で締めくくることは、工学の専門家になるための最終段階にふさわしいプログラムです。ぜひ、研究活動の面白さに触れてください。卒論の経験で得るものは大きいはずです。
4. 大学院生への期待(修士)
粒子法は自動車、化学、機械、素材、医療、エネルギー、などの様々な分野で実用的に用いられていますが、基礎的な研究が必要なテーマがたくさんあります。研究テーマは指導教員と大学院生とで話し合って決めています。研究成果は商用ソフトウェアに組み込まれるなどして、実際に産業でも活用され、社会的な貢献を実感することができます。研究室で多数実施している企業との共同研究に参加すれば、産業からのニーズを直接肌に感じることができます。
5. 大学院生への期待(博士)
博士課程では本格的な研究を行うことが必要です。先端的な研究テーマを設定し、研究結果を導き、考察し、それを学術論文としてまとめ、査読を乗り越えて論文出版まで至らなければなりません。国内における学会での発表や、海外における国際会議での発表も経験しなければなりません。その上で、博士論文を論理的にまとめ、博士論文審査に合格しなければなりません。これを3年間で終えるには継続的な努力が必要です。ただし、こうした厳しい経験を経た後には、一人前の研究者にりっぱに育っています。ぜひ、多くの優れた若者に挑戦していただきたいと思います。
2018.3.20